第23回「モンタニャールの詩」と歴史上の英雄たちパイオニア吹奏楽団

コラム

2011年 11月 16日

「演奏会情報」のページをご覧いただいてもお分かりの通り、当団の第22回定期演奏会の曲目が決まりました。今回はその中で第1部のメインプログラムである交響詩「モンタニャールの詩」について触れたいと思います。

「モンタニャールの詩」は、現代のヨーロッパを代表する作曲家であるヤン・ヴァン・デル・ローストの手による曲です。この曲は、フランス・スイス両国の国境に近いイタリア北部のヴァッレ・ダオスタ州の州都アオスタにある市民バンドがヴァン・デル・ローストに委嘱したことにより、1996年に作曲されました。日本でもある高校の吹奏楽部の活動を取り上げたテレビ番組で演奏されるなど、吹奏楽ファンにはその名を知られた曲です。

ヴァッレ・ダオスタ州から見たアルプス山脈の名峰モンブラン

この曲名の中の「モンタニャール」とは、フランス語で「高地に住む人々」を意味します。ヴァッレ・ダオスタ州は名峰モンブランを筆頭とするアルプス山脈の麓にあり、この地方の人々、つまり「モンタニャール」の歴史や文化が曲のモチーフになっています。ヴァッレ・ダオスタ州はフランス及びスイス方面からのアルプス越えの主要ルートに当たるため、実際に歴史上の表舞台にもしばしば登場しています。ここでは少しその様子を見ていきたいと思います。

まず、古くは古代ローマの時代に、ローマ帝国と覇権を争ったカルタゴの名将ハンニバルがアルプスを越えてイタリアに進攻してきました。ハンニバルがどのルートでアルプスを越えたのかについては諸説ありますが、ヴァッレ・ダオスタ州を通るルートも有力な説の1つになっています。

「ヨーロッパの父」と呼ばれるフランク王国のカール大帝もアルプスを越えてイタリアに進攻してきた1人です。カール大帝はヴァッレ・ダオスタ州を含む北イタリアを制した後、さらに中部イタリアまで支配下に置きました。

かのナポレオンもこのアルプスを越えてイタリアに進攻してきたことがあります。ナポレオンはまだ皇帝になる前の1800年にイタリア遠征を敢行していますが、そのときにヴァッレ・ダオスタ州を経由して進攻しました。ダヴィッドによる有名な『アルプスを越えるナポレオン』はこのときの姿を描いたもので、その絵にはナポレオンの他、同じくアルプス越えを果たしたハンニバルとカール大帝の名前も記されています。

アルプスを越えてイタリアに進攻したハンニバル(左)とナポレオン

このように多くの英雄たちが足跡を残したヴァッレ・ダオスタ州ですが、同時に無名の「モンタニャール」もまたこれらの事績の中に存在したはずです。そして彼らが去った後も、現在に至るまで日々の歴史を刻んでいるのは「モンタニャール」であることは間違いありません。むしろ、この地方の長い歴史において英雄たちは一瞬の輝きを放ったのみであり、多くは語られないまでも真の歴史は「モンタニャール」と共にある、と言った方がよいかもしれませんね。

「モンタニャールの詩」の中には、以上で見てきたような戦いを表現した部分もあります。他にもルネサンス・ダンスを題材とした部分など「モンタニャール」を描く様々なフレーズが盛り込まれています。それだけ豊かな表情が「モンタニャール」にある、ということでしょう。今回の定期演奏会では、当団のお送りする「モンタニャールの詩」が表す風景をどうか共に楽しんでいただけたら、と思います。

文責:磨墨

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