第47回 知っているようで知らない?「結婚行進曲」パイオニア吹奏楽団

コラム

2013年 6月 3日

この4月のことですが、当団の団員同士の結婚式がありました。当団の中には何組か団員同士の夫婦がいますが、また新たに一組誕生したことになります。音楽が持つ縁の力は強いものがありますね。

さて、結婚式の音楽といえば、いわゆる「結婚行進曲」が有名です。最近は結婚式において必ずしも流れる曲というわけではありませんが、それでも結婚式をイメージさせる曲としてはやはり「結婚行進曲」に勝るものはないでしょう。

そんな「結婚行進曲」ですが、「結婚行進曲」という曲そのものが結婚式用に書かれたわけではなく、また一般に「結婚行進曲」と呼ばれるものも2曲あります。その2曲とはメンデルスゾーンの劇音楽『真夏の夜の夢』の中の「結婚行進曲」と、ワーグナーのオペラ『ローエングリン』の中の「婚礼の合唱」です。両方とも劇中の結婚式の場面で登場するので、「結婚式用に書かれた」といえば、そうとも言えるかも知れませんね。『真夏の夜の夢』と『ローエングリン』は今でもよく上演される名作ですが、メロディだけで結婚式を想像させる2つの「結婚行進曲」は原作以上に世間に知られる存在になっています。

フリードリヒ3世(左)とヴィクトリア

これらの2曲が「結婚行進曲」として独立的に扱われるようになったのには割合はっきりとした由来があります。1858年にプロイセンの皇太子フリードリヒ3世とイギリスの皇女ヴィクトリアの結婚式が行われたのですが、その際にこれら2曲が使われたというのがそれです。当時のプロイセンはドイツ統一へ向けて強国への道を突き進んでいる最中であり、またイギリスは言わずと知れた世界一の大国でしたから、この結婚式の持つ世間へのインパクトはさぞや大きかったことだと思われます。その後、2曲とも広く一般の結婚式でも演奏されるようになっていきましたが、ロイヤルウェディングの威力もさることながら、曲自体の持つ魅力がそうさせた、というのもまた間違いのないところでしょう。

そのような歴史を経てもはや結婚式における定番としての地位を築いている2つの「結婚行進曲」ですが、意外と一般に知られていないことがあります。『ローエングリン』の「婚礼の合唱」は主人公のローエングリンとヒロインのエルザの結婚式で出てくるのですが、その後のオペラのストーリーを辿ると、ローエングリンはエルザの前から去り、エルザは死ぬ、という悲劇的な結末が待っているのです。このように見ていくと、ワーグナーの「結婚行進曲」は新郎新婦の行く末を不吉なものにする、という暗示がありそうであり、結婚式で演奏するのが果たしてふさわしいのか、という疑念が湧いてきますね。

『ローエングリン』の舞台となったベルギー・アントワープ

とはいえ、ワーグナーの「結婚行進曲」の下で挙式したフリードリヒ3世とヴィクトリアは最後まで円満に結婚生活を送ったという話が伝わっています。『ローエングリン』の悲劇的な結末は当然フリードリヒ3世もヴィクトリアも知っていたと思いますが、そんなことは意に介さなかったのでしょう。現代のカップルが全員『ローエングリン』のストーリーを知っているわけではないでしょうが、結局は「結婚行進曲」の由来がどうこう、というよりはその後の人生を2人でどう送るかが肝心、ということですね。

今回結婚した新郎新婦の新婚旅行先は、図らずもメンデルスゾーンとワーグナーを生み、フリードリヒ3世とヴィクトリアが過ごしたドイツでした。本人たちはさぞかし「ロイヤルな」旅行を楽しんだことでしょう。2人の末永い幸せを祈りたいものだと思います。

文責:磨墨

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