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物流業界を大きく変える2024年問題とは?
問題の内容と考えられる影響、有効な対策について解説

2023年 10月 27日

ルート探索・配送

2024年問題とは、2024年4月1日から自動車運転の業務に時間外労働の上限規制が適用されることによって生じる諸問題のことです。物流業界においては、売上の減少やドライバー不足の加速、事故リスクの増加などの問題が発生すると考えられており、労働環境の見直しが必要です。

物流業界では現在、2024年問題への取り組みが急務とされています。2024年問題とは、自動車運転業務の時間外労働時間に上限が設けられることによって生じるさまざまな問題の総称です。

時間外労働の規制は全ての産業に適用されますが、中でも物流業界への影響は大きいとされています。2024年問題を解決するには、当該問題を正しく理解することや、時間外労働の上限規制について把握すること、然るべき対策を講じることが必要です。

本記事では、物流業界を取り巻く2024年問題の概要と、時間外労働の上限規制に伴う変更点、2024年問題によって生じる物流業界への影響、企業が取るべき対策について解説します。

目次

2024年問題とはドライバーの時間外労働の上限規制によって生じる問題のこと

2024年問題とは、2024年4月1日から適用されるドライバーの時間外労働の上限規制によって生じるさまざまな問題のことです。

時間外労働の上限規制は、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から既に導入されていますが、一部の事業・業務については5年間の経過措置が設けられています。そのうちの一つが運送業を含む自動車運転の業務で、2024年3月31日までは上限規制は適用されません。

2024年4月1日からは、その他の事業と同じく、時間外労働の上限規制の適用が開始されます。時間外労働の上限規制は法律によって定められているため、違反した場合は罰則の対象となります。

よって、物流業や運送業でも2024年4月1日以降は、時間外労働の上限規制を意識した労働環境づくりをしなければなりません。

しかし、物流業や運送業は、荷物の取扱量の増加や慢性的なドライバー不足といったさまざまな問題を抱えています。これらの問題に加え、時間外労働の上限規制が重なった場合、物流が維持できなくなる恐れがあることから、2024年問題は物流業界における大きな課題となっています。

※出典:消費者庁「物流の『2024年問題』と『送料無料』表示について」
物流の『2024年問題』と『送料無料』表示について

※出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 (PDF)

物流業界における時間外労働の上限規制とそれに伴う変更点

2024年4月1日からは、時間外労働の上限規制の適用により、物流業界で以下のような変更があります。

時間外労働の上限時間

法改正前までは、時間外労働(残業や休日労働)は月45時間まで、年360時間以内という大臣告示による上限が設けられていましたが、法律上の規制はなく、制限を超えたとしても行政指導のみに留まっていました。

しかし、2024年4月1日以降は時間外労働は原則として月45時間まで、年360時間以内と法律によって定められ、守られなかった場合は罰則が科されることもあります。自動車運転の業務の場合、特別条項付き36協定を締結すれば、年間の時間外労働の上限を960時間にすることが可能ですが、これを超える労働は臨時的特別な事情がある場合でも認められません。

休日労働に関しては、後述する拘束時間の上限を超えないことと、休日労働の回数が2週間に1回を超えないことが原則となります。

※出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」
時間外労働の上限規制

※出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」 p. 7
時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 (PDF)

※出典:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示が改正されます!」
トラック運転者の改善基準告示が改正されます! (PDF)

拘束時間の変更

法改正前までは、トラックドライバーの1年の拘束時間は3,516時間、1カ月の拘束時間は原則として293時間(最大320時間)でした。しかし、2024年4月1日からは、1年の拘束時間が原則3,300時間、1カ月の拘束時間は原則284時間に短縮されます。

労使協定を締結することにより、1年間の拘束時間は最大3,400時間、1カ月の拘束時間は最大310時間まで延長することが可能です。

延長する場合は、以下2つの要件を満たす必要があります。

  • 284時間超は連続3カ月までに留めること
  • 1カ月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努めること

また、1カ月最大310時間まで働けるのは年に6カ月までです。1日当たりの拘束時間についても、原則は13時間以内で、上限は15時間。14時間を超えるのは週に2回までというルールがあります。

例外として、宿泊を伴う長距離貨物運送の場合は16時間まで延長することができますが、週2回が限度で、かつ1週間における運行が全て長距離貨物運送(一の運行の走行距離が450km以上の貨物運送)であり、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものに限られます。

なお、1台の自動車に2人以上のドライバーが乗って業務にあたる2人乗務では、身体を伸ばして休息できる設備がある場合に限り、拘束時間を20時間まで延長かつ後述する休息期間を4時間まで短縮することが可能です。

隔日勤務の場合は、2暦日の拘束時間は21時間、休息期間は20時間となる特例が適用され、仮眠施設での夜間4時間以上の仮眠を挟むという条件で、2暦日の拘束時間を24時間(2週間に3回まで)まで延長できます。ただし、2週間の拘束時間は126時間(21時間×6勤務)を超えることはできないので注意しましょう。

※出典:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示が改正されます!」
トラック運転者の改善基準告示が改正されます! (PDF)

休息期間の変更

法改正前までは、トラックドライバーの1日の休息期間は継続8時間とされていました。しかし、規制適用後は継続11時間を基本とし、9時間を下回らないことが原則となります。例外として、宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、継続8時間以上までと上限が緩和されますが、適用可能なのは週2回までです。休息期間のいずれかが9時間を下回る場合は、運行終了後に継続12時間以上の休息期間を与えることが義務づけられています。

なお、継続9時間の休息期間を与えることが難しい場合は、分割休息の特例を適用できます。分割休息とは、一定期間(一カ月程度)における全勤務回数の2分の1を限度として、休息期間を拘束時間の途中および拘束時間の経過時間に分割して与える特例のことです。

ただし、分割休息の特例を適用する際は以下の条件を満たしていなければなりません。

  • 分割休息は1回3時間以上
  • 休息期間の合計は、2分割の場合は10時間以上、3分割の場合は12時間以上とする
  • 3分割が連続しないよう努める

※出典:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示が改正されます!」
トラック運転者の改善基準告示が改正されます! (PDF)

運転時間と連続運転時間

法改正後は、トラックドライバーの1日の運転時間は2日平均で1日9時間まで、1週間の運転時間は2週平均で週44時間以内となります。さらに連続運転時間にも上限があり、4時間を超えて運転し続けることはできません。

運転を中断する際は、原則として1回おおむね連続10分以上、合計30分以上の休憩を取る必要があります。10分未満の運転の中断は3回以上連続してはいけません。

高速道路を走行していて、近場にSAやPA等がないなど、やむを得ない事情がある場合は延長も可能ですが、4時間30分までが上限です。高速道路を走行する際は連続運転が4時間30分を超えないよう、どのSA・PAに寄るかをあらかじめ計画する必要があるでしょう。

※出典:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示が改正されます!」
トラック運転者の改善基準告示が改正されます! (PDF)

上限規制に違反した場合の罰則

時間外労働の上限規制に違反した場合、労働基準法第119条の定めにより、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。

なお、36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合や、36協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた場合も、同様の罰則の対象となります。知らない間に時間外労働の上限規制や36協定に違反することがないよう、従業員の時間外労働の状況や、働き方を今一度チェックしておきましょう。

※出典:e-Gov法令検索「労働基準法」
労働基準法

2024年問題に伴う物流業界への影響

2024年問題によって懸念される物流業界への影響は、大きく分けると以下の4つに区分されます。

運送できる荷物量の減少

時間外労働の上限規制により、ドライバーの労働時間が減少すると、ドライバー1人当たりの運送できる荷物量も減少します。さばける荷物の量が少なくなれば、運送業者の利益が減少してしまい、経営に影響が出るかもしれません。

また、労働時間が減ったにもかかわらず、荷受量を制限しなかった場合、ドライバー1人当たりの業務負担が増加してしまいます。運送業者のドライバーは体力的にも負荷が高い仕事です。1人当たりの業務負担がさらに増えた場合は、従業員の健康が損なわれたり、離職が増えたりする恐れがあります。

顧客離れのリスク

時間外労働の上限規制によって減少した利益を補うには、商品やサービスの価格改定の検討が必要です。

しかし、値上げをすることで、荷主からの抵抗や反発が強くなり、顧客が同業他社に流れてしまう可能性があります。一度離れてしまった顧客を取り戻すのは容易ではなく、経営が悪化することも考えられるでしょう。

ドライバーの賃金減少

残業や休日出勤などの時間外労働には割増賃金が適用されます。特に2023年4月1日からは、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられ、中小企業でも大企業同様、50%の割増賃金を支払うことが義務づけられました。

しかし、時間外労働の上限規制が適用された場合、支給される手当も減ってしまいます。もし基本給が少なければ、時間外労働の上限規制をきっかけに離職するドライバーが増える可能性があります。

※出典:厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」 p. 1
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます

事故リスクの増加

時間外労働の上限規制による荷物量の減少を防ぐには、ドライバー1人当たりの運送効率をアップしなければなりません。しかし、配送スピードの上昇を要求した場合、ドライバーは焦りから交通事故などを起こしてしまうかもしれません。

事故で損害賠償をすることになれば、金銭面での負担はもちろん、会社のイメージダウンにもなるため、顧客離れにつながってしまうでしょう。

2024年問題に対応するための6つの対策

物流業界を取り巻く2024年問題に対応するためには、現段階から然るべき措置を講じる必要があります。

ここでは運送業者が行うべき2024年問題への主な対策を6つ紹介します。

1. 2024年問題への正しい理解と共有

2024年問題によって自社にどのような影響がもたらされるのか、現時点での労働環境にどのような課題があるのかを正しく理解することが大切です。

また、労働環境が変わることで従業員の働き方や生活にも影響を及ぼします。特に時間外労働の上限規制はドライバーの賃金減少につながる要因となるため、残業や休日労働を減らすことに反発するドライバーもいるかもしれません。

2024年問題の対策として労働環境を変える場合は、従業員にもその理由をしっかりと説明し、納得してもらうことが重要です。

2. 労働環境の是正

時間外労働の上限規制の導入に伴い、ドライバーの拘束時間や休憩期間なども大きく変わります。これまでの就業規則では、労働基準法に抵触する可能性もあるため、変更が必要な部分と不要な部分を確認しましょう。

変更が必要な部分は労働基準法に沿って改正し、適正な労働環境を整えます。併せて就業規則の修正を行い、従業員に通達しておくのを忘れないようにしましょう。

3. 荷主、消費者への理解促進

価格の改定や荷受量の制限などが必要になった場合、荷主や消費者へ事前にアナウンスを行うことが大切です。アナウンスがないまま、いきなり価格を上げたり、荷受量を制限したりすると、顧客離れが加速する原因となります。

なぜ値上げや荷受量の制限が必要になったのかをホームページに掲載したり、顧客宛に個別に通知したりして、荷主や消費者の理解を得るようにしましょう。

4. システムやサービスの導入

システムやサービスをうまく活用して業務効率化を図ることも、2024年問題の対策として有効です。

例えば、運行管理サービスを利用して配送ルートを最適化する、運送中のドライバーと連携を取れるシステムを導入して顧客からの要望に柔軟に対応できるようにするなどが挙げられます。こうしたシステムやサービスの中には、日報の自動作成ができるものもあり、ドライバーの業務負担の軽減にも役立ちます。

システムやサービスを活用して業務効率を上げれば、時間外労働の上限規制が適用されても、これまでと同じ量の業務をこなせるかもしれません。

5. ドライバーの確保

2024年問題によって、ドライバー1人当たりの労働時間の減少や離職率の上昇などが予想されており、ドライバーの確保および定着にも注力する必要があります。

ただし、運送業界は慢性的な人材不足に陥っているため、ドライバーを確保するのは容易ではありません。人材を確保するには、賃金をアップしたり、ワークライフバランスの取れる労働環境を整えたりと、ドライバーにとって魅力のある職場であるとアピールすることが大切です。

労働条件や労働環境の改善は既存のドライバーの定着にもつながります。新たな人材の確保と、既存の人材の定着のためにも、待遇の改善に力を入れましょう。

6. リードタイムの延長

リードタイムとは、作業工程にかかる期間のことです。物流においては、製品の出荷指示から、実際に納品先に配達されるまでに要する時間を指します。

リードタイムの短縮は、自社の強みになったりキャッシュフローの改善などにつながりますが、荷物が十分に集まらないうちからピストン輸送させると、人手不足やコスト増などさまざまな問題が生じます。

近年はサービスの差別化のために、翌日配送などスピーディな配送サービスを提供しているところも少なくありませんが、2024年問題の解決のためにはリードタイムの延長を検討することも大切です。

例えば、長距離輸送は中1日を空け、荷物を満載にした状態で輸送するようにすれば、より効率的な運送が可能です。

2024年問題に向けて今から十分な対策を取ることが大切

2024年問題とは、2024年4月1日から自動車運転業務における時間外労働の上限規制が始まることによって生じる諸問題のことです。これにより、トラックドライバーの拘束時間や、残業や休日労働できる時間などがこれまでよりも短くなります。

物流業界における2024年問題の影響としては、運送できる荷物量が低下することで利益が減少したり、利益を補填するためにサービスや商品を値上げしたために顧客離れが進むといったことが考えられます。また、ドライバーの賃金が減ることによる離職率アップも懸念されていますが、物流業界では元々ドライバー不足が深刻化しており、2024年問題によって経営に影響が出てしまう可能性もあるでしょう。

2024年問題を乗り越えるためには、今のうちに労働環境の見直しや、荷主・消費者への理解促進、ドライバーの確保などの対策を講じる必要があります。併せて、社内で2024年問題を周知し、従業員の理解を得られるよう努めることも大切です。現時点での自社の課題をしっかりと把握し、2024年問題に向けた対策を始めましょう。

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