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ラストワンマイルとは?
再配達の問題と、再配達に対する効果的な対策を分かりやすく解説

2023年 10月 27日

ルート探索・配送

ラストワンマイルにおける再配達は、余分なコストの発生や長時間労働の慢性化など、さまざまな問題につながります。発送者や配送事業者、受取人間のコミュニケーションを深める、配送ルートを最適化するなどの対策を講じ、再配達率の改善に取り組む必要があります。

近年、オンラインショッピングをはじめとする在宅需要は年々増加しています。その結果、物流業界の宅配取扱量は大幅に増加し、多くの企業がラストワンマイルの問題を抱えることになりました。中でも再配達の影響は大きく、優先的に解決すべき課題とされています。

本記事では、ラストワンマイルの基礎知識や、再配達の問題との関連性、再配達への対策について解説します。再配達問題への効果的な対策である配送ルートの最適化に関する課題についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

目次

ラストワンマイルとは、最終拠点から消費者までの最後の道のりのこと

ラストワンマイルとは、受取人の最寄りの最終拠点から消費者までの最後の道のりのことです。物流のプロセスは、まず荷主から預かった荷物を物流倉庫に持ち込み、入荷検品や仕分けなどを行った後、受取人の最寄りの配送拠点に持ち込まれます。この最後の配送拠点から、受取人(消費者)の元へ届くまでの最後の道のりがラストワンマイルです。

ラストワンマイルは、直訳すると最後の1マイルという意味ですが、最終拠点から消費者までの最後の道のりであれば、距離に関係なくラストワンマイルと呼ばれます。荷主から集めた荷物をまとめて物流倉庫に配送する場合とは異なり、ラストワンマイルの行き着き先は多岐にわたります。そのため、ラストワンマイルをいかに効率化するかが物流業界の課題です。

また、ラストワンマイルでは、他社との差別化を図るためのサービス競争が激化しており、当日配送や再配達無料といったサービスが当たりになっています。ラストワンマイルでのサービスを充実させることで、企業やドライバーへの負担が増加していることも大きな問題といえるでしょう。

ラストワンマイルにおける再配達の問題

ラストワンマイル問題には、ドライバーの不足や高齢化、短期配送による業務量の増加などさまざまな問題が含まれていますが、中でも深刻化しているのが再配達の問題です。再配達とは、受取人が不在だった場合、日や時間を改めて配達しに行くことです。前述のとおり、再配達は無料であることが多く、インターネットなどで簡単に依頼できます。利用者にとっては便利なサービスですが、ラストワンマイルで再配達が発生すると次のような問題が生じます。

余分なコストがかかる

再配達が発生した場合、余分なコストがかかります。再配達になってしまうと、その日のうち、あるいは後日などに、再び配送を行わなければなりません。そのぶん走行距離が増えるため、余分な燃料費が発生し、コストがかさんでしまいます。再配達を無料で行っている場合は、増えた分のコストは全て企業の負担となります。特に近年はガソリン代が急騰しているため、再配達による燃料費が経営を圧迫する要因になり得るでしょう。

倉庫管理の手間がかかる

その日のうちに配達できずに持ち帰った荷物は、再配達まで再び倉庫で保管が必要です。本来であれば保管の必要がない荷物を再び管理しなければならないため、従業員の業務負担が大きくなります。

長時間労働の慢性化

ドライバーの1日当たりの配達個数は概ね決まっており、通常は定時内に終わる量に調節されています。しかし、再配達が発生すると、配達に要する時間が増えてしまうため、ドライバーは時間外労働せざるを得なくなります。長時間労働が慢性化すると、ドライバーの心身に大きな負担がかかり、モチベーションの低下や労災事故のリスク上昇など、さまざまな問題につながりかねません。

ドライバー不足の加速

再配達によってドライバーの業務負担が増えると、離職率も上がる傾向にあります。

現代日本の運輸業、郵便業では慢性的なドライバー不足に陥っており、離職者が増加すると経営が立ち行かなくなる恐れがあります。実際、厚生労働省が発表している産業別入職者・離職者状況によると、令和4年上半期の運輸業・郵便業の入職者は約16万5千人であるのに対し、離職者数は約19万6千人と、離職者が3万人以上も上回っている状況です。

元々運輸業、郵便業ではドライバーの高齢化が懸念されていましたが、近年は宅配需要の増加による労働環境の悪化が原因で早期離職も増えており、ドライバー不足が加速しています。

※出典:厚生労働省「産業別の入職と離職の状況」 p. 1
宅配便の再配達削減に向けて

環境問題

ラストワンマイルにおける再配達問題は、企業の経営だけでなく、環境問題にも影響を及ぼしています。再配達によってトラック一台当たりの走行距離が延びると、そのぶん車両が排出する温暖化ガスの量も増加するためです。

日本政府は2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けて、各企業に温暖化ガス排出削減への取り組みを呼び掛けています。カーボンニュートラルの実現のためにも、再配達の問題は取り組むべき課題だといえるでしょう。

日本の再配達事情

日本における再配達の状況を紹介します。国土交通省では宅配便の再配達率のサンプル調査を年2回実施していますが、令和5年4月における宅配便の再配達率は約11.4%でした。つまり、約10個に1個の荷物が再配達の対象となっていることが分かります。

再配達率は平成29年10月~令和元年10月までの期間において、15~16%程度で推移していましたが、令和2年4月の調査では8.5%と一桁台にまで減少しました。これは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くの人が外出を避け、在宅時間が増加したことが要因とされています。同年10月の調査では、再配達率が11.4%と再び増加し、以降は11%台で推移しています。

※出典:国土交通省「令和5年4月の宅配便の再配達率が約11.4%に減少」
令和5年4月の宅配便の再配達率が約11.4%に減少

※出典:国土交通省「(参考資料)宅配便再配達実態調査結果の推移」 p. 1
(参考資料)宅配便再配達実態調査結果の推移 (PDF)

再配達問題が発生する理由

ラストワンマイルにおいて再配達問題が発生する理由は複数あります。

国土交通省の調べによると、宅配便が再配達になった理由について、最も多かったのは配達日時が指定できない商品だったという回答です。次いで、配達に来ることを知らなかった、いつ来るか意識したことがないので気が付いたら来ていた、と続いています。

商品によっては注文時に日時指定ができないものもあります。また、贈答品や入荷待ちの商品などでいつ配達されるのかがそもそも分からないというものもあるでしょう。受取人が配達の日時を把握できていないことが再配達の要因となっているといえます。

※出典:国土交通省「宅配便の再配達削減に向けて」
宅配便の再配達削減に向けて

ラストワンマイルにおける再配達対策

前述した再配達の原因を踏まえ、ラストワンマイルにおける有効な再配達対策を4つ紹介します。

関係者間のコミュニケーションを深める

関係者間のコミュニケーションを深めることは、再配達を減らすための有効な対策です。再配達の原因をみると、荷物が届くことを知らなかったために再配達になっているケースが多いことが分かります。

再配達を減らすためには、発送者(通販事業者)、配送事業者、受取人の相互コミュニケーションが重要です。例えば、発送者から受取人に発送日および到着予定日のお知らせを送る、配送事業者が事前に受取人に配達予定日を報せておき、必要があれば配達日時の変更を促すなどです。受取人が配達日を把握できるため、配達日を知らずに不在にしてしまったというケースでの再配達を減らせるでしょう。

受取手段を増やす

荷物の受取手段を自宅での手渡しに限定してしまうと、再配達のリスクが高まります。もし事前に配達日時が分かっていたとしても、急な仕事などで不在にしてしまうこともあるかもしれません。受取手段を複数用意し、受取人のニーズに合わせて選択できるようにすれば、再配達の削減につながります。

例えば、コンビニで受け取れるようにする、宅配ボックスや玄関への置き配に対応する、外部の宅配ロッカーを利用できるようにするなどです。受取手段が増えれば、一度の配送で受取人に荷物を届けられる確率が高くなるでしょう。

無人配送を導入する

無人配送を導入するのも、ドライバー不足や再配達による長時間労働対策に有効です。無人配送とは、ドローンやロボットなどを活用し、ドライバーを使わずに荷物を配送するサービスです。無人配送を導入すれば、再配達が発生してもドライバーの負担は増加せず、長時間労働の是正にもつながります。

ただし、現時点での無人配送はまだテスト段階にあり、実用化には時間が必要です。

配送ルートを最適化する

再配達による業務負担を軽減するには、配送ルートを最適化するのも重要なポイントです。より効率的なルートを設定すれば、時短や燃料費の削減につながり、再配達が発生しても全体的な業務負担を軽減することができます。

配送ルートの最適化は他の方法に比べ、すぐに取り組める対策です。ラストワンマイルにおける再配達問題に悩んでいる場合は、まず配送ルートの最適化から検討しましょう。

配送ルートの最適化に関する課題

ラストワンマイルの再配達問題を解決するには配送ルートの最適化が有効です。しかし、配送ルートの効率化にはいくつかの課題があります。

配送ルートの計算に手間がかかる

配送ルートを最適化するためには、配送先に応じて、どの道を通るのが最も効率的かを的確に判断しなければなりません。配送エリア周辺の地理や交通事情に詳しいベテランドライバーであれば、経験則から最適なルートを計算できるかもしれませんが、経験の浅いドライバーでは難しいでしょう。

複数の条件を考慮してルートを決める必要がある

配送ルートを最適化するためには、配送車両の種類や道路状況、ドライバーのスキルなど、さまざまな条件を考慮しなければなりません。例えば、地図上では最短のルートでも、途中で混雑が発生しやすいルートを選択すると、トータルの所要時間が延びてしまう可能性があります。複数の条件を考慮して最適なルートを導き出すのは難しく、ルート作成が複雑化する要因になっています。

突発的な条件への対応が難しい

配送ルートを決めて出発したとしても、計画どおりにそのルートを進めるとは限りません。事故などによって思わぬ渋滞が発生したり、受取人から途中で再配達を依頼されたりした場合、事業所とドライバー間で連携を取り、時にはルートを変更しなければなりません。事業所とドライバー間の連携には、携帯電話やメールを用いるのが一般的ですが、運転中は応じられないため、臨機応変に対応できない点も課題の一つです。

配送ルートの最適化に運行管理サービスを利用するメリット

配送ルートの最適化にはさまざまな課題があり、手動でルートの効率化を図ると手間と時間がかかります。運行管理サービスを活用すれば自動で最適なルート作成が可能です。

運行管理サービスとは、地図データや、車両に搭載したドライブレコーダーなどで取得したデータを元に、配送ルートの最適化を図れるサービスです。データを取り込むと、システムが自動で効率的なルートを計算してくれるため、手動で配送ルートを作成する手間を省けます。

また、インターネットを利用するクラウド型サービスなら、リアルタイムで車両の状態を把握できます。ルートを外れたときに警告を出したり、途中でルート変更を指示したりすることも可能です。さらに、ドライブレコーダーで取得した情報をデータベースに蓄積すれば、より最適なルートの計算ができるようになります。運行管理サービスの中には、日報の自動作成などドライバーの業務負担軽減につながる機能が搭載されているものもあります。配送ルートの効率化に悩んでいるのなら、運行管理サービスの導入を検討してみるのもよいでしょう。

ラストワンマイルにおける再配達は優先的に解決すべき問題

荷物の取扱量の増加やドライバー不足が深刻化している運輸業界において、ラストワンマイルにおける再配達は無視できない重要な問題の一つです。再配達問題を放置していると、コストの増加やドライバーの業務負担増などの影響により、経営が悪化する可能性があります。

再配達の理由としては、受取人が配達日時を把握していなかったケースが多くみられます。配送事業者から受取人に配送予定日を連絡するなど関係者間のコミュニケーションを深めることで、再配達の削減につながるでしょう。コンビニや宅配ロッカーでの受け取りや、置き配といった手渡し以外の受取手段を増やすのも有効な対策です。

また、配送ルートを最適化すればドライバーの労働時間やコストを削減できるため、業務効率の改善につながります。再配達による配送量の増加に対応するためには、業務の効率化は重要な課題です。しかるべき対策を講じて再配達問題の解決に努めましょう。

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