Edge of Pioneer #3
信じた音は、信じられない音になりました。
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このスピーカー、いい薫りがしますね?
音もまろやかだし。

そのキャビネット、元はウイスキーの樽だったんですよ。
キャビネット
スピーカーを構成する外箱の部分。

樽?
これ、樽材からできているんですか?
でもなんで、樽材からスピーカーをつくろうなんて、思ったんですか?

物語性なんです。
100年かかって育った木を、50年樽として使って、残り50年をオーディオとして使う。っていうストーリーなんです。

でも、音質的な裏付けとか、
あったんですよね?

いや。
裏付けは、試作品をつくった後で調べました。
実は、製品化のためウイスキーの樽材を保有する会社に、プレゼンをしたんですよ。

そしたら、どうして新材ではなく、使い終わった樽材の方が良い音になるのか、証明してくださいって言われちゃって。

つまり、最初は、ほんとにストーリーだけだったということですか?・・・

はい。
以前に、ウイスキーの樽材で作った家具があるっていう話を聞いていまして、その時にひらめいたんですよ。
その樽材でスピーカーを作ったら面白い、200年にわたる物語だ。って。
 
その音を聴きながらウイスキーを呑む。素晴らしいひと時に酔えそうじゃないですか。

確かに。
でも、その想いだけで、つくり上げたんですか?

ええ。
もちろん試作したスピーカーがいい音で鳴ったからなんですけど・・。
でも、結果的には、特性評価のデータも後押ししてくれたんで。

あとで調べてみたら、この樽材、
50年の長い時間をかけて、成分の一部がウイスキーにしみ出しているんです。
そしてキャビネット材に求められる特性に、材質が変化していたんですよ。

なるほど・・・。

そうそう、このスピーカー、フロントに少し隙間がありますが、それって大丈夫なんですか?

はい。
樽材は無垢の板なんで、反ったり、収縮したりするんです。
そのままではスピーカーとして成り立たないんで、フロントにはわざと遊びを残しておいて、ボックス自体は追い入れ組接という伝統の技術を使って、手間をかけて組み合わせることでその問題を解決したんですよ。
追い入れ組接(おいいれくみつぎ)
日本の伝統的な木工技巧で、木と木を接合させる技法の一つ。釘などの金物を使わずに堅牢な組みが行えるのが特徴で、神社仏閣等の建築に用いられることでも有名です。

なるほど・・・。
ところで、市場に出してからのこのスピーカーの評価は、どうでしたか。

こんなにやわらかい音に出会ったのは、初めてなんて、レビューもありました。

うれしいっていうか、ホッとしましたよ。
あの時の直感は、間違ってなかったですね・・・。

この、ひとりの開発者の遊び心のようなひらめきから始まったプロジェクトはその後ラインナップを形成し、なにより音を愉しむファンを増やすことに繋がっていきました。

スピーカーひとつでも、
あなたに「新しい感動」をお届けしたい。

そんな私たちの思いです。
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