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■DVD-R/RW開発の経緯


パイオニアがDVDの開発を始めたのは、1991年のこと。次世代LDとして、高画質の映画を2時間以上記録することがその目的でした。1994年には片面2.1GBのMPEG1システムであるαカラオケシステムをリリース。また、東芝と共同で赤色レーザを用いたSD規格を導入します。その一方で、ソニー、フィリップス陣営はMMCD規格を提唱。1995年末には、この両方式をあわせる形で最終的な合意に達します。そして、DVDコンソーシアムが作られ、本格的にDVDの開発がスタートしたのです。
1996年8月にはDVD Videoブックが発行され、同年11月には初のDVDビデオプレーヤーが発売されます。1997年には追記型3.95GBのDVD-Rブックと2.6GB書き換え形ディスクのDVD-RAMブックが、1999年には書換え型の4.7GB規格であるDVD-RWブックとDVD-RAMブックが発行され、DVDファミリーがそろうことになりました。そして2000年には4.7GBのDVD-Rの規格も導入され、現在に至っています。



■DVD-R/RWの規格


DVDは「Digital Versatile Disc」の略で、多目的デジタル・ディスクを意味します。その名のとおり、汎用のメディアとしてさまざまな用途で使われることを前提に、規格が定められています。また、CDでは音楽用とデータ用でフォーマットが異なりますが、DVDではアプリケーションによらず、物理フォーマット、ファイルフォーマットは共通に使用するという基本コンセプトがあるのも大きな特長のひとつです。
DVDのフォーマットは3つのレイヤ(層)から構成されています。これは、各規格間の互換性を確保するためのもので、3つのレイヤを個別にかつ厳密に管理することで他のメディアでは考えられない高い互換性が実現しているのです。

(1)物理レイヤ
ここでは、ディスクの機械的特性、光学的特性、再生時の信号特性 さらにはハードウェア設計に必要な変調方式やエラー訂正など物理的な規定が行なわれています。その構造は、DVDプレーヤー、DVDドライブなどの再生機が信号を正確に読み取るための統一されたものになっています。4.7GBという大容量を実現するため、その規定はCDと比べてかなり厳しいものとなっています。

DVDディスクの基本仕様
DVD standard DVD-ROM DVD-R DVD-RW
Laser Wavelength   635 / 650 nm  
Objective lens NA   0.60  
Reflectivity 45 to 85 %   18 to 30 %
Modulated amplitude   0.60 min.  
Data track form   Single spiral track  
Track pitch   0.74μm  
Tracking method DPD (Differential Phase Detection)
Minimum pit length   0.40 μm  
Data modulation   8 / 16, RLL(2,10)  
Error correction RS-PC (Reed-Solomon Product Code)
Channel bit rate   26.16 Mbps  
Scanning velocity   3.49 m/s (CLV)  
User data capacity   4.70 Gbytes / side  



DVD-R/RWの記録後ディスクの再生領域(Information area)は、DVD-ROMディスクとまったく同一の構成で、記録されるデータフォーマットも同一です。さらにInformation areaの内側にDVD-R、DVD-RW特有の領域であるR-Information areaが配置されています。この領域は、記録レーザパワーの校正や、記録機にとって必要な記録管理情報)のために用意されており、一般の再生プレーヤー、ドライブではディスク再生上の問題が生じないように考慮されています。

各規格共通のディスク構造
各規格共通のディスク構造


(2)論理レイヤ
ここではデータの管理方法、すなわちファイル・フォーマットについて規定されています。DVDのファイル・フォーマットはすべてUDF(Universal Disk Format)で統一されており、同じコンテンツを民生用機器とコンピュータシステムで共通に取り扱うことができるわけです。また、過去のシステムとの整合性を取るために、CD-Rのファイル・フォーマットであるISO9660でもアクセスができるようにしています(UDF Bridge)。UDF、ISO9660ともディスク上のすべてのファイルにアクセスできるため、どちらのを使ってもディスク上のコンテンツを完全に読み出すことができます。
論理レイヤ


(3)アプリケーション・レイヤ
最上位の階層で、そのメディアが使われるアプリケーションについて規定されています。記録された映像や音声を再生するための、動画データや音声データの管理方法が主な内容です。このレイヤだけは、DVD-ROM、DVD-R、DVD-RWでそれぞれ異なったフォーマットとなります。
アプリケーション・レイヤの規定には、映像の再生を目的とするDVD-Videoや、CD以上の高音質を実現するDVD-Audioなどがあります。


(4) DVD-Rのふたつの規格
2000年、DVD-Rの規格は、DVD-R for Authoring ver.2.0とDVD-R for General ver.2.0という、ふたつに分かれます。前者はプロ用のオーサリング用途に限定され、後者は一般の民生用途に開放されている規格です。
その最も大きな相違点は、著作権の保護に関わる複製管理の仕組みの有無。民生用途のDVD-R for General 規格では、複製禁止データを記録できないようにするための再生専用領域(改ざん不可能領域)が必須とされています。さらに、複製の世代管理用NBCAデータ(オプション)のための領域がディスク内周に付加されています。DVD-R for Authoringには、こうした複製管理の仕組みがありません。
なお、両者の記録機が互換性を持っていては規格を分けた意味がなくなるため、記録レーザ波長やアドレス配置の違いが設けられています。

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■DVD-R/RWを便利にするテクノロジー


●Liquid Crystal Tilt(液晶チルト)
トラックピッチ0.74μmという微細な世界でデータのリード/ライトを正確に行なうためには、常に光をディスクに対して垂直に照射し、ピットに対して焦点がずれないようにすることが必要です。その際には「コマ収差」と「球面収差」の補正が大きなファクターとなってきます。

DVD-R/RWのメディアは工程上、完全な平面にすることは困難であり、またマウント時に微妙な傾きが生じることもあります。この傾きが、集束され点となるはずの光スポットが一点に結像せず尾を引いたようになってしまう「コマ収差」を発生させます。また一部の光線が本来の焦点位置からレンズに近い方向にずれ、光スポットがボケてしまう「球面収差」は、メディアの保護層の厚さのばらつきに起因するといわれています。

これまでこれらを補正するために数々の技術が開発されてきました。しかしそのほとんどは「コマ収差」の補正のみをカバーし、メカニカルに光ピックアップを動かすもので、そのためのアクチュエータ、フォーカス、トラッキングなど複雑な各種サーボの制御が必要になり、メカニカルトラブルとコストアップの原因にもなっていました。

これに対してパイオニアが開発したテクノロジーが「液晶チルト」です。液晶は電圧をかけると光の屈折率を変化させる性質を持っています。この性質を利用してレーザー光源と対物レンズの間に「液晶位相補正素子」と呼ばれる部品を配置し、メディアが傾いているときにはこれに電圧をかけて光の屈折率を変えます。さらにまたメディアの保護層の厚みのばらつきによる焦点位置のズレにも、この素子による補正で対応します。
Liquid Crystal Tilt(液晶チルト)


液晶チルトは「球面収差」と「コマ収差」の両者を単一の素子で補正できるパイオニア独自のテクノロジーであり、光ピックアップを動かす必要がないので複雑なメカニズムを必要とせず、光ピックアップの構成をシンプルにできるとともに、トラブルの可能性を低減させることができます。
ディスクの傾きによるコマ収差の補正

●DRT-DM(Distributed Real Time Defect Management)
DVD-R/RWでは指紋やゴミが付着したり、キズなどによってその部分のセクターのリード/ライトができなくなってしまいます。こうしたメディアにデータを書き込むときには不良セクターを飛ばして記録することになりますが、不良セクターをそのまま放置しておくとパフォーマンスが低下してしまい、リアルタイムの記録ができなくなってしまうおそれがあります。これを解決するためのテクノロジーがDRT-DMで、パイオニアがDVD-RW用に開発したDefect Managementテクノロジーを基にDVDフォーラムがDVD-VRで採用しているUDF Ver.2.00と定められています。これはDVD-RWディスクを最初に論理フォーマットし、不良セクターが発見されたときにはそのセクターに交替するための領域(スペアリングエリア)を確保するとともに、どの不良セクターをどのセクターに交替させたかを記録しておくためのスペアリングテーブルの領域を生成します。これはCD-RW等ですでに採用されているMt. Rainierと似たテクノロジーですが、Mt. RainierがPCのデータ保存を重視して書き込み後に常にベリファイを行なうのに対して、DRT-DMでは動画/音声の記録の場合にはベリファイを行なわず、リアルタイム性を確保しています。
DRT-DM(Distributed Real Time Defect Management)

●Smart Laser Driver
ディスクに最適なピットを記録するために記録信号を適切な状態に調整する「ストラテジ回路」は通常メイン基板に配置されています。ストラテジ回路の信号調整は記録速度が向上するにつれてより短時間で行なうことが必要となり、4倍速書き込み時には9.3nsのクロック周波数の1/20程度の分解能で調整しなければなりません。こうなるとメイン基板で調整した信号が光ピックアップまで送られる途中のフレキシブルケーブルにおいて伝送歪みが発生し、実際のレーザーの駆動信号はこの分解能以上の変動が発生し、記録波形がずれるなど記録特性が劣化する可能性があります。これは書き込み速度が速くなるほど顕著になります。
そこで「Smart Laser Driver」ではストラテジ回路をレーザードライバーICに内蔵し、光ピックアップ側でストラテジ調整を行ないます。メイン基板から送られてくる信号に歪みが発生していることには変わりありませんが、Smart Laser Driverが内蔵するPLL回路できれいなクロック波形に再生するので記録特性への影響はありません。今後Smart Laser Driverはさらなる高速書き込みを安定して行なうためのキーとなるテクノロジーです。
Smart Laser Driver


●Ultra DRA(Dynamic Resonance Absorber)
パイオニアのDVD-ROMドライブに採用して高い評価をいただいている、高速ディスク回転時の機械振動を大幅に低減する仕組みがUltra DRA。おもりとゴム製のダンパーをディスクの記録/再生機構に取り付けることにより、不要な振動を吸収します。その結果、高速回転時にもピックアップレンズの振られが小さくなり、読み取り精度が向上。とくにDVD-ROMの高速再生時に威力を発揮します。また、縦置き姿勢でも安定した動作を保証します。
Ultra DRA(Dynamic Resonance Absorber)

●QuickFormat
従来PC用のDVD-RWでは、パケットライトでの使用時には最初にディスク全体をフォーマットする「FullFormat」を採用していました。「FullFormat」はDVD-ROMと物理的な互換性を保つために、リードイン、データエリア、そしてリードアウトと同様の属性を持つボーダーアウトを記録し、ディスク全体を全く隙間がない状態にすることができます。リードインには、フォーマットされたデータエリアのサイズなど、ディスクの情報が記録されており、通常DVD-ROMドライブなどにディスクが挿入された時点で読み込まれます。ボーダーアウトはDVD-ROMのリードアウトと同様にデータエリアの終わりを示し、データのアクセス中に光ピックアップが外側へ飛び出すことを防いでいます。つまり、いちど「FullFormat」を行えば、そのディスクは全体が全く隙間がない状態になり、データエリアはパケット単位でのデータの書き換えを自由に行なうことができるようになるわけです。しかし、「FullFormat」には、"時間がかかる"という欠点があります(1倍速記録で約1時間)。その問題点を解決するために新たに設けられたものが「QuickFormat」です。
「QuickFormat」はDVD-R/RWドライブが最低限必要な、ディスクを認識するための簡易リードイン、リードアウトと、データエリア(ファイルシステム部分などユーザーデータの存在する部分のみ)からできており、DVD-RWディスクが1分間程度のフォーマット時間で使用できるようになります。追加される映像などのデータは、リードアウトを上書きしながらデータエリアの後ろに新たにデータを加える形で追記していくことができ、追記されたデータの後には再び簡易リードアウトが記録されます。
この状態のメディアは、ファイナライズと呼ばれる処理を行い、リードインとボーダーアウトを正式なものに記録しなおすことにより「FullFormat」されたメディアと同等になり、一般のDVDプレイヤーやDVD-ROMドライブで認識することができるようになります。

●MultiBorder
CD-Rで採用されているMultiSessionと同等の機能が、MultiBorderです。DVD-R の場合、DVD-RW の「QuickGrow」のようにいちど記録したボーダーアウト(リードアウト)を消すことはできないため、この機能はより有効であるといえます。つまり、一区切りのデータを記録した後、ファイナライズするのではなく、次のボーダーが追記可能な状態で前のボーダーを閉じることができるようになります。閉じられたボーダーでは、データエリアがリードインとボーダーアウトで区切られます。2番目以降のボーダーには、ボーダーイン(リードインのかわりとなる短いブロック)、データエリア、ボーダーアウトが記録されます。リードインまたはボーダーインには、そのボーダーの大きさや次のボーダーインのアドレスなどが記録されているので、マルチボーダー対応のDVD-ROMドライブであれば、リードイン、2番目のボーダーのボーダーイン、3番の...、という方法で読み進んでいき、すべてのボーダーの情報を得ることができます。閉じられていないボーダーは、マルチボーダー対応のDVD-ROMドライブでも認識できませんが、データを追記しさらにボーダーを閉じることによって、記録ドライブからDVD-ROMドライブへのデータのやり取りを行なうことができます。

●1GB制限の解除

いままでDVD-ROM/VIDEO作成時、とくにオーサリング用途では、ディスクアットワンスという書込み方式が行われていました。ディスクアットワンスは、リードイン、データ、リードアウトのすべてを先頭からいちどに書込む方式ですが、DVD-ROMの規格から定められている「追記不可状態のディスクは最低1GBのデータエリアが必要である」という制限に該当していました。そのため、1GBより小さなデータを扱う場合にも必ず、1GBデータ分の書き込み時間(14分程度)が必要となっていました。
しかし、追記型の新しい書き込み方式のサポートによって、この制限が解除できるようになりました。DVD-R/RWのどちらも、1GBより小さなデータを扱う場合には実データ書き込み時間だけに短縮され、DVD-ROMドライブで読めるようにする場合でも 1〜2分程度のボーダークローズ時間で済むようになり、より快適なレコーディング環境を提供できるようになりました。

各ドライブのメディア記録速度について



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