carrozzeria QUALITY  カロッツェリアクオリティ
第5回 使いたくなる、触れたくなるインターフェース。 きっかけとなったのは、有機ELの技術。
操作を、悦びに変えるために。
 
きっかけとなったのは、有機ELの技術。
1999年、カロッツェリアはカーオーディオの世界に大きな革命をもたらしました。メインユニットとして“世界初”有機ELディスプレイ搭載に成功した「DEH-P9000」。表示内容をハッキリ伝えるそのディスプレイは、リアルな3D動画表示で、まさに“映画”を見ているような空間を車室内にもたらしました。
そしてこの有機ELが後に操作と表示を連動させる、わかりやすくシンプルなインターフェースを実現するのです。
この有機ELディスプレイが生まれたきっかけ、それは1987年にコダック社 C.W.Tang 等によって示された、有機薄膜を積層する有機ELの実用化研究に、パイオニアが着目したことに始まります。
1997年、パイオニアは世界で初めて有機ELの量産化に成功。同年に発売されたFM文字多重レシーバー「GD-F1」は有機ELによる日本語メニューやキーガイドで使いやすいインターフェースを表現しました。
なぜカロッツェリアは有機ELに着目したのか?実は、有機ELはバックライトを使用する従来の液晶ディスプレイと比較して、3つの点で大きな優位性があるのです。1つは、自発光型という特性から、車室内のどこからでも見やすい広い視野角を確保していること。2つ目は、液晶の約1000倍とも言われる極めて高速な応答能力により残像やチラツキがないこと。3つ目は高い輝度と高解像度により明るい車内でも見やすいこと。これらの優位性が車室内のインターフェースをより快適にするということに、カロッツェリアは大きな可能性を見出したのです。
見えるラジオなどの文字情報表示も可能にした、初の有機EL採用モデル「GD-F1」。
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操作を、悦びに変えるために。
この頃、有機ELの技術を活かしてカーオーディオのデザイン・操作性をさらに向上させたいと考える人々がいました。その中のひとり「DEH-P9000」のデザインを担当したパイオニアデザイン(株)の須磨は当時をこう振り返ります。
当時主流だったLEDディスプレイ採用の、「DEH-P5000」。
「ただ普通の見やすさだけでは物足りない。常に新しいことをやっていたいという気持ちがありました。例えば操作して楽しいとか、驚きがあるとか。もともと映画やゲームが好きだったので、そのエンタテインメントの世界をクルマに持ちこんだら操作に悦びまでも感じさせることができるんじゃないかと考えていました。」

以前から、須磨は3DCG(立体コンピュータ・グラフィックス)に対して強い関心があり、この技術をどこかに使えないかとチャンスを探っていました。そのとき舞い込んできたのが有機ELディスプレイ開発の話。ただし有機ELで表現できる色の濃度はたったの4階調のみでした。
「当時は、4階調で立体とか写真みたいな絵を出せるという発想はどこにもありませんでした。しかし、ドットを様々なパターンでタイル状に組合わせ、グラデーションを滑らかに表現するディザリングという手法を使えば、たとえ4階調でも立体の表現ができるということに気づいたのです。」
写真のようなグラフィックや3DCGに、動きの要素を組合わせることで、それまでの文字やシンプルなアイコンといった表示から、飛躍的に表現力が高まりました。まさに須磨が思い描いていたチャンスが到来したのです。
有機ELにより画期的な3Dムービー表示を可能にした、「DEH-P9000」のディスプレイ。
当時、特に力を入れたのは、美しい動画で車室内を演出する「ムービー」でした。フレームレートは15枚/秒であったため、10秒で150枚、20秒で300枚もの絵が必要になります。その他の様々な表示を合わせると、1機種で3000枚もの絵が必要とされ、その作業に苦労は絶えず、制作に費やした時間は莫大なものとなりました。しかしその甲斐もあって、有機ELによる「ムービー」は、車室内をかつてないエンタテインメント空間へと変えていきました。
その注目は年々高まっていき、最初は1機種1パターンだったムービーも、翌年発売された「DEH-P7700」では2パターンに増加。

「たった2つのムービーですが16パターンもの案を出してどれがベストかを検討しました。」
「神秘的な海を泳ぐイルカたち」「遥か上空から見下ろす雄大な遺跡」をテーマにしたメインユニット、「DEH-P7700」のムービー。
『神秘的な海を泳ぐイルカたち』、『遥か上空から見下ろす雄大な遺跡』など、新機種が増えるたびに毎回新たな設定とシナリオを提案することで、さらに車室内にエンタテインメント性をもたらし続けました。
しかし、ムービーによるエンタテインメント性の実現だけが有機ELの目的ではありません。年々多機能化され複雑になる操作に対して、誰にとってもわかりやすくシンプルなインターフェースを実現するキーとなるのが有機ELの目指す世界。そこでカロッツェリアは有機ELを使用し、操作と表示を連動させるという次なるステージを目指しました。
その想いは最新のモデル、1Dオーディオメインユニット「DEH-P760」にも息づいています。「DEH-P760」は有機ELディスプレイとロータリーボリューム&セレクターとの高い連動性によりUSBデバイスやiPodに収録された膨大な楽曲を瞬時に感覚的な操作で呼び出せるインターフェースを実現しています。
「有機ELディスプレイで特に見てもらいたいのは、ただ操作しやすいとか見やすいだけではないというところです。有機ELはさらにその上の、操作して楽しいという世界を目指しています。」
感覚的な操作を実現した「DEH-P760」
使いたくなる、そして触れたくなるインターフェース。それは、使って楽しい、使って気持ちいいということ。カロッツェリアは、“人とモノを美しくつなぐ”ために、これからも更なる操作性・操作感の向上を、追い求めていきます。
第6回へ続く


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